これは、2016年5月の話しである。
千葉県は長生郡白子町に「ひまわり」という農産物直売所がある。
1年ほど前、たまたま前を通りかかって見つけた店だ。
外観はショボク、どうせ、その辺の直売所と似たり寄ったりの品揃えだろうと、素通りしかけたのだが、まあ話しのタネにと思い直し、入ってみた。
予想通り、鮮魚売り場はなく、農産物中心だったが、思いがけなくも巡り合ったのが、ハマグリによく似た、テビチという貝だった。
ハマグリよりは平べったく、模様や殻のツルツル度も、ハマグリとは異なる。
ネットで調べてみると、どうやらコタマ貝という貝らしい。
値段は1パック1kgで598円。
大きいのが10ケ以上入っており、ハマグリよりかなり安いので買って帰ったが、これが大正解だった。
(写真のパックは、大きいのを4ケ食べた残り。)
![IMG_1404-thumbnail2[1].jpg](https://bousounosengyoten.up.seesaa.net/image/IMG_1404-thumbnail25B15D-thumbnail2.jpg)
素人のバカ舌には、ハマグリとテビチの味の違いなど、わからない。
この貝にはまってしまい、それ以降、しばしば買いに行くようになった。
そんなある日の昼下がりのこと、午前中で売り切れてしまったからと、テビチを持ってきた漁師さんに出会った。
聞けば、テビチ専門の漁をしているわけではなく、ナガラミ漁に出た際にテビチも採れるから、この店に持ってきているとのこと。
道理で、テビチが置かれている棚にナガラミが、しかも結構立派なナガラミが置かれているわけだ。
さらに聞けば、地元では、テビチの上にキャベツとか白菜などの野菜、好みでバターを乗せて蒸して食べるとのこと。
そこで帰宅後、その方法を試してみれば、野菜に貝のうまみとバターの香りが浸みこんで、美味いこと、美味いこと。
この食べ方が気に入り、以降、我が家の定番料理となっている。
一方、白子町は、タマネギ祭りが開かれるほどのタマネギの一大産地。
今は5月。タマネギの収穫期ということで、あちらこちらの道路沿いで農家の方がタマネギの直売をやっている。
また、ひまわりにも5kg、10kgの大袋が店頭にドーンと置かれている。
そこで5ケほど入った小袋を買い求め、テビチと一緒にいつもの方法で食べてみたのだが、新タマネギの甘さと貝のうまみとがベストマッチで、胃袋の中にスイスイ吸い込まれていった。
さすがのテビチ、さすがの白子タマネギである。
ごちそうさまでした。
(付記)
その後、東金の道の駅などでテビチが売られているのを、たびたび見かけるようになった。
いずれ九十九里名物としてメディアに取り上げられるようになるかもしれない。